順調に進んでいます
UNITED GRINDING Groupは、スイス製・世界初の産業用積層造形工作機械IMPACT 4530を開発しました。 CEOのStephan Nell氏は、チューリッヒ工科大学のMarkus Bambach教授とのインタビューの中でこの新技術の可能性について説明します。
Nellさん、UNITED GRINDING Group は、IMPACT 4530で工作機械向け積層造形 における技術リーダーシップを目指しますか?
Stephan Nell: 確かに先頭を切りたいと思いま す。積層造形の経験が長く、成功している老舗 メーカーがたくさんあります。しかし、弊社はこ の問題に独自のDNAを持ち込みたいと考えて おり、その中には高い信頼性と可用性が含まれ ています。お客様を成功させることは、引き続 き重要です。しかも、最高の技術によってです。
これはどのような戦略的動機からなのでしょ うか?
Stephan Nell: 積層造形は研削の前の製造工 程なので、3Dプリンターの潜在的な顧客とな り得る産業に入ることができます。そしてもち ろん、多くのイノベーションが必要な新しい製 造分野でもあります。何故なら、研削は既に 古くなっていると言ってもいいくらいだからで す。進むべき道は、進化しかないのです。もち ろん、常に新しい技術革新があり、機械は良く なり続けています。しかし、新しい巨大な一歩 というのはもはやありません。一方、3Dプリン ターは根本的に新しい技術です。それが私た ちの関心事でした。
Bambachさん、積層造形が本当に技術的に 飛躍することは、今日既に予見できるのでしょ うか?
Markus Bambach: 確かに、技術的な飛躍が あると思います。一次産業革命で織機が発明 され、その後パンチカードでプログラミングで きるようになった頃までさかのぼると、ハード ウェアとソフトウェアの革新が手を取り合って 技術的な飛躍を遂げた例が多く見られます。 これは、積層造形でも同じです。ハード面では 良いマシンを用意し、ソフト面ではチェーン全 体をマスターすることが必要です。
Nellさん、新しい技術分野への参入は、具体 的にどのように行われたのでしょうか。そのよ うなことは、一朝一夕に解決できることではあ りません。
Stephan Nell: そうですね、それはちょっとした 旅のようでした。まず、1996年から既に3Dプ リンターの経験があるInspire社と協同で、私 たちは顧客の役になり、その役に入り込んで みました。その後、IRPDを買収して参入して いきました。そして、開発チームと3Dの経験を 持つInspire社の人材を派遣し、こう言ったので す: 「マシンを作ってください」と。そこから誕生 したのが、IMPACT 4530 – 9.2トンのスイス製 マシンです。
Bambachさん、UNITED GRINDING Group は、ここで教科書的なアプローチを採ったので しょうか?
Markus Bambach: 積層造形ならではのセー ルスポイントがあるのは間違いありません。例 えば、部品当たりコストは、部品の複雑さや個 数にあまり依存していません。これは他の手 順には存在していません。さらに、生産の地域 化、分散化も可能です。とはいえ、コスト構造は 常に生産連鎖の観点から考えなければなりま せん。また、コストの問題が優先されるのであ れば、現在の積層造形のビジネスケースは成 り立ちません。何故なら、部品がプリントでき る状態になるまでには、比較的長い時間や多く の経験が必要なことが多いからです。より複雑 な部品や難しいアプリケーションでは、実際に 数週間後に要件を満たす部品ができるまで、エ ンジニアのチームを雇わなければなりません。 しかし、UNITED GRINDINGは今、非常に堅実 なマシンを市場に投入しています。これは非常 に良い条件です
Nellさん、Bambachさんは、まだこのような技 術にやや警戒しているようです。
Stephan Nell: 弊社は、積層造形が研削に 取って代わるべきだとは決して思っていま せん。何故なら、このプロセスは同じ表面品 質を提供しないからです。そして、精度も追 い付きません。しかし、これによって、現在の 研削盤の上流にあるものが補完される、新 しい生成プロセスができるのです。 この技 術は、当社の既存のポートフォリオを補完す る多くの技術の一つです。 今日のMägerle を見ると、研削だけでなく、フライスやドリルも できるようになっています。その工作機械は、 マシニングセンターです。弊社は、WALTER EWAGでレーザ技術を蓄積してきました。こ の分野だけを専門にしている大手企業よりも 多くの測定機を製造していることも、多くの人 は知らないでしょう。積層造形機もこの概念に 当てはまります
ザンクトガレンにあるIRPDの若いエンジニアと の会話では、積層造形によって、全体としてより 良い製品が得られるという理想が語られまし た。 この理想をどの程度共有していますか?
Stephan Nell: エンジニアが正しいのは、 3D製 造は設計者にまったく新しい可能性を与えてく れる点です。そもそも3Dプリンターを活用する ためには、どのように部品を設計すればいいの か、まずその方法を学ばなければならないので す。今、フライス盤や旋盤で作っている既存の 部品を、3Dプリンターに1対1で移植しても意 味がありません。
Markus Bambach: 加工で稼いでいる業者に 3D機械を提供しても、そこに設計者がいなけ れば、より良い部品を生み出すことは難しいで しょう。何故なら、彼はいまだに機械加工で作 る構造で考えているからです。私が知る限り、 産業界で成功した例は、主に油圧機器分野で す。また、冷却装置では、多くの部品を個別に プリントするのではなく、一体化した部品をプ リントしています。このような例では、ポテンシ ャルが体系的に引き上げられた技術的な飛躍 を見ることができます。例えば、極限まで軽量 化することが可能な航空宇宙分野においても です。そして、個別部品が重要な医療技術に目 を向けることができます。しかし、社会としてよ り良い製品を手に入れることができるかと言わ れると、疑問が湧いてきます。私が知っている 最大の3Dによる量産は、デザイナー眼鏡を年 間数万個作ることです。しかし、それだけでは 200万個の部品は作れません。そこに技術の限 界があるのです。
Stephan Nell: もちろん、限界はあります。しか し、同時に変化も進行しています。これまで、 金属分野の3Dプリンターは、大学や企業の試 験部門に設置されていることがほとんどでし た。しかし、今の顧客は、機械を使って工業的 に生産することを望んでおり、プロセスの最適 化には興味がないのです。彼らはそれを望ん でいるのです。そして、その要望に応えたのが IMPACT 4530です。
顧客が産業用3Dプリンター工作機械に期待す ることは何でしょうか?
Stephan Nell: 機械の安定した動作、迅速な作 業、そしてミスをしないことが必要です。そのた め、IMPACTはそれぞれ1,000ワットのレーザを 最大4つ搭載しています。しかし、レーザは当然 ながら硝煙痕跡を残すので、それに対処する必 要があります。それから、一見すると単純なこと もあります: 材料を撒くリップは弊社が監視し ており、万が一不具合が発生した場合は自律 的に交換し、単に継続するだけにならないよう にしています。それから、工業プロセスにとって 重要なのは、顧客が人件費を使って機械を常時 監視する必要がないことです。そのため、機械 は高度な自律性を持ち、広範囲に自身を監視 しなければなりません。原則として、部品や材 料は変わるので、機械もそれに対応しなけれ ばなりません。材料変更をするために、1つまた は2つのシフトを減らせません。弊社の場合、材 料変更は120分、ジョブからジョブへの変更は 15分で済みます。また、フライス加工や旋盤加 工、研削加工を行う顧客は、社内に多くの生産 技術を持ち、それに応じて多くの従業員を抱え ています。それに伴い、3Dプリンターとの連携 も必要になってきます。しかし、作業プロセスに おいて人が金属粉に触れることはあってはなり ません。そのため、環境を汚染しないような設 計をしなければならないのです。
それは正しい道に向かっているように聞こえま す。 もしかしたら、理想は実現できるかも知れ ません。Bambachさん、どう思いますか?
Markus Bambach: 技術としての積層造形が発 展していけば、そうなるかも知れませんね。し かし、大量生産に適した既存技術の代替技術 になるとは思えません。また、ソフトウェアソリ ューションのさらなる発展も重要です。
Stephan Nell: 理想に向かうことはいいことだ と思います。ちなみに、ザンクトガレンのIRPDチ ームは、ソフトウェアソリューションを常に最適 化し続けています。結局、それはほとんどの顧 客にとって、効率の問題なのです。一方、ここで は環境的な側面も大きな役割を担っています。 積層造形は、ここに大きな可能性を秘めている のです。輸送量が減り、サプライチェーンが短く なります。工作機械業界にも積層造形が浸透し ていくと確信しています。しかし、その際、積層 造形が他のすべてを排除したり、引き継いだり することはありません。
対談
文章: Michael Hopp 写真: Thomas Eugster